税務相談室
※法改正により、内容が変更になっている場合があります。
平成20年6月16日発行

簡単経理の「落とし穴」(その一)

(第27号)
博士ハテナ マンション経営者の中には、帳簿をつけていない人や出納簿だけ(これを「単式簿記」といいます。)で間に合わせている人は多い。今回はそんな人が陥りやすい「簡単経理の落とし穴」を紹介します。

もうかっているのに債務超過

債務超過 このオーナーは、帳簿の作成をある所に依頼しておりましたが、「どうしてこんなに税負担が重いのだろう。」と嘆いておられました。そこで、複式簿記の観点からチェックをするために、現存する事業用の資産と負債を並べてみることにしました。すると、損益では大きな利益が出ているにもかかわらず、財産面では大幅な債務超過という、おかしな現象が見えてきました。考えられるのは、「誰かが多額の事業資金を持ち出しているのではないか。」という疑問です。しかし、オーナーは「決してそんなことはない。」と断言します。
修繕工事費の処理をみて、ようやくその原因が判りました。支払った工事代金のうち修繕費にならなかった部分、すなわち、建物の価値を増加するために支出した部分(これを「資本的支出」といいます。)が減価償却資産のリストから欠落しておりました。その結果として、財産面では債務の額が資産の価額を超過し、損益面では、その欠落した資産について減価償却費が計算されていなかったために実際より大きな利益が計上されていました。

復活の舞台を与える

減価償却資産 ところで、このオーナーは、修繕工事代金のうち「どこまでが修繕費で、どこからが資本的支出なのか?」の区分をめぐって記帳担当者との間で意見の衝突がありました。
しかし、「税務署が認めてくれないから。」の殺し文句を呑んで、譲歩を重ねてこられました。
ところが、やむなく譲ったはずの資本的支出が今度は償却の機会を与えられないまま放置されていたことを知って、愕然と肩を落とされました。
「先生、余分に納めた税金は返してもらえるのでしょうか?」
税法の定めでは、確定申告書の提出期限を過ぎて一年以内であれば、誤りを申し出て払い戻しを請求することができます。これを「更正の請求」といい、そのタイミングは1年以内です。しかし、減価償却資産はいずれ必要経費となる「費用のかたまり」ですから、できるだけ過去に遡って「費用のかたまり」を発掘してください。
これを機会に、償却の機会を失った「費用のかたまりに」に復活の舞台を与えるためです。



ハッピーハウス税務相談室
税理士 坂西 史也
 
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