税務相談室
※法改正により、内容が変更になっている場合があります。
平成21年12月15日発行

遺産取得の予約

ひと昔前までは、親と同居する長男が先祖伝来の財産を相続するのが普通でしたが、最近ではなかなかそれもむずかしい時代になりました。今回は、そんな悩みを抱えるある長男からの相談です。

(第36号)

質問

私は親と同居する公務員です。父は日頃から「家の財産は長男であるお前が相続するに決まっている。」と言いますが、遺言書を作成した様子はありません。この口約束を何らかの方法で有効な形にすることはできませんか。

死因贈与契約を考える

死因贈与契約書(サンプル) 死因贈与契約は「私が死んだらこの財産をあなたに上げる。」という約束です。同様な効果は遺言でもできますが、遺言による贈与(これを「遺贈」といいます。)は遺言者の単独行為ですから、他人が遺言の内容を事前に確認することはできませんし、例えそれができたとしても、遺言者は自分の判断でいつでもその内容を変更することができます。ところが、死因贈与は当事者(父親とあなた)の約束ですから、その内容を書面にする(できれば公正証書にすることをお奨めします。)ことによって契約の証とし、これを仮登記(これを「始期付所有権移転仮登記」といいます。)することによって他の者に対抗することができます。また、その契約の中に約束の実現を担う「執行者」を定めておけば、他の相続人の協力を要せずに、執行者と受贈者(あなた)の二人で権利移転の手続きを進めることができます。その際、執行者は受贈者であるあなたが兼ねることもできますので、そうすれば、あなたが単独で本登記(これを「所有権移転登記」といいます。)をすることも可能になります。

税金について

死因贈与契約を締結し、仮登記をしたとしても、その時点ではまだ贈与は実行されていませんので、この時点では何の課税関係も生じません。課税関係が生じるのは、贈与者が死亡して贈与の効力が発生したときです。この場合、死因贈与は「贈与」という字は付いていてはいても、死亡を契機として財産が移転するところは相続と同じですから、死因贈与は相続税の課税対象として扱われます。この点、贈与税の課税対象となる生前贈与に比べれば税負担はずいぶん軽くなります。但し、死因贈与は法律的にはやはり「贈与」ですから、登記をするときには「贈与」を原因とします。贈与を原因とする移転登記をするときにかかる登録免許税は相続のときの5倍(不動産の価額の2%相当額)になります。さらに、相続のときにはかからない不動産取得税もかかります。そこが死因贈与の欠点といえますので、一家の財産のすべてとはいわず、一部について死因贈与としてはいかがでしょうか。



ハッピーハウス税務相談室
税理士 坂西 史也
 
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